あらすじ
深夜喫茶『月灯り』でアルバイトをする大学生・白石雫の悩みの種は、閉店30分前に必ず現れる無愛想な常連客だった。
黒いコートに藍色の瞳。ブラックコーヒーを一杯だけ注文し、窓の外を見つめるだけで一言も喋らない男——神崎蒼真。
「せめて二十二時に来てくれれば、まだ許せるのに」
毎晩毎晩、閉店作業を遅らせるこの男は一体何が目的なのか。終電を逃しそうになりながら、雫は今日もため息をつく。
しかしある夜、店長が意味深に告げた。
「あの客、お前のこと見てるぞ」
「窓の外見てるように見せかけて、ガラスに映るお前のこと、ずっと目で追ってる」
そして三日目——いつもの時間に、彼は現れなかった。
なぜか気になってしまう自分に戸惑いながら、雫は少しずつ、無口な常連客の本当の姿を知っていく。
閉店間際の30分が紡ぐ、不器用な大人たちのラブストーリー。
私の心の営業時間は——あなたがいる限り、まだ終わらない。