あらすじ
「君の代わりなんて、いくらでもいるんだよ」——婚約破棄を告げられたその日、私は余命一年を宣告された。
五年間、傲慢な公爵子息アルヴィンの「目立つな」という命令に従い、十二カ国語を操る才能を隠し、外交文書の翻訳も全て彼の手柄として譲ってきた伯爵令嬢リーネ。けれど、もう従順な婚約者を演じる必要はない。
残された時間で、私は自分の言葉を届けたい人にだけ届ける。
祖父が遺した小さな屋敷で翻訳の仕事を始めた私の前に現れたのは、かつて私が翻訳した詩集に救われたという青年クロード。彼は言った。「君の言葉は、俺の人生を変えた」と。
誰にも認められなかった才能。誰にも届かないと思っていた言葉。それを必要としてくれる人が、確かにいた。
余命を知った私が最期に選ぶのは、かつての婚約者への執着ではなく、本当に届けたい人への言葉——。
「代わりはいくらでもいる」と捨てられた翻訳家が、残された時間で見つける本当の愛と、言葉の力を描く物語。