あらすじ
「君のような地味で暗い女は、私の恥だ」——華やかな婚約披露パーティーの夜、リーゼロッテは三百人の貴族の前で婚約破棄を告げられた。三年間尽くした相手に選ばれたのは、『白百合の聖女』と呼ばれる可憐な令嬢。泣きもせず毅然と礼をした彼女を、誰もが「情のない女」と嘲笑った。
土砂降りの雨の中、傷心のまま走り出したリーゼが迷い込んだのは、見知らぬ路地裏にひっそりと佇む古書店。『雨の日にだけ開く店』——そこで出会ったのは、銀髪に琥珀の瞳を持つ謎めいた青年レインだった。
「ようこそ、本に愛された人」
不思議な店主に導かれるまま、リーゼは自分だけが持つ特別な力を知ることになる。本の声が聞こえ、物語の心に触れられる——亡き母から受け継いだ、稀有な才能。
社交界では「地味で暗い」と蔑まれた彼女を、古書店の本たちは温かく迎え入れる。そして百年もの孤独を過ごしてきた本の精霊レインもまた、彼女に惹かれていき……。
一方、捨てたはずの元婚約者の周辺では、不穏な影が動き始めていた。
婚約破棄から始まる、心優しき令嬢と本の精霊の運命の恋物語。雨音と古い紙の香りに包まれた、癒しと再生のファンタジー。