あらすじ
フローリア・エルヴァンシア公爵令嬢には、感動も興奮もなく、感情より計算が先に来る。
彼女は2年と4ヶ月の歳月と多額の資金を費やし、現在の競馬界の主流である「セント・シメオン系」の血が入っていない異系血統の牝馬20頭を海外から輸入した。
しかし、名門牧場当主である婚約者のヴィクターは、「走法が古い」「走れない馬から走る馬は生まれない」と彼女の投資を嘲笑する。
ある日、ヴィクターは主流血統の純粋な血を持つ男爵令嬢に懸想し、「真実の愛」を理由にフローリアに婚約破棄と牧場からの追放を言い渡す。
フローリアは、男爵令嬢の馬が高度な近親交配であり「長期的には免疫機能の低下、繁殖能力の減退が発生しやすい」と論理的に忠告するが、彼は聞く耳を持たず、牝馬たちを維持費の無駄だと切り捨てる。
「了解しました。手続きを進めましょう」
フローリアは一切の感情を乱すことなく婚約破棄を受け入れ、語学力や長距離輸送の管理経験を持つ優秀な専属スタッフ14名を全員引き連れて牧場を去る。
数年後――。
単一血統に依存したヴィクターの牧場は、フローリアの予言通り、受胎率の低下や疾病の流行により馬主たちが離れ、没落の一途を辿っていく。
一方、フローリアは血の行き詰まりを感じていた王室牧場長官と提携し、持ち込んだ牝馬たちと王室最高種牡馬の交配権を獲得。
産まれた産駒たちはクラシックレースを次々と制覇し、彼女の牝馬たちは「エルヴァンシアの基礎牝系」として競馬界を席巻する。
元婚約者の牧場が競売にかかったと聞いても、彼女は冷徹に言い放つ。
「予測できた範囲を出ていません。感情的な反応を行う理由がありません」
これは、愛よりもデータを信じる極めて合理的な令嬢が、時代遅れと笑われた牝馬たちと共に「次世代血統地図の支配者」へと上り詰めるまでの物語。