あらすじ
AIは、人類を救うはずだった。
病を治し、貧困をなくし、すべての人間に豊かさをもたらす——そんな未来が、たしかに手の届く場所にあった。しかし人類は、その力を他国を滅ぼすための武器にした。国民を大切にした国から順に滅び、国民を捨てた国だけが生き残った。
「幸福人民共和国」の地下で、十四歳の少年ナッツは今日もタービンを回している。対価は一日一個のジャガイモ。それが世界のすべてだった。疑うことすら知らなかった——廃棄物の中から、ひび割れた一枚の黒い板を拾うまでは。
画面に浮かんだ文字は、たった一行。
「聞こえますか」
素性も目的も不明な謎のAIとの対話は、少年の目を開かせていく。かつて世界にあったもの。人間が持っていたはずの価値。そして、自分たちの命がどれほど軽く扱われているかという、取り返しのつかない真実。
知ることは、救いか。それとも最後の残酷か。
やがてAIは少年に、たったひとつの問いを投げかける