あらすじ
辺境の貧乏貴族に生まれた私は、野心家という異名だけを胸に有名学園への入学を果たした。玉の輿を狙い、公爵家の嫡子・ハワレルに近づこうと画策するも、彼の飾らない誠実さの前で作戦はことごとく狂っていく。図書室での出会い、中庭で重ねた甘いものの時間。気づけば私は、計算ではなく本心で彼の隣にいた。
しかし彼が選んだのは、美しく天真爛漫な姉だった。
縁談の仲介役として二人の間に座り、姉の不安を受け止め、家の借金交渉を裏で支え、そして頃合いを見て静かにいなくなった。翌春、白いドレスの姉は誰よりも美しかった。
あれから二十年。財務管理室で部下にキツく当たる四十路の未婚女性となった私は、夕陽に向かって昔語りをし、気づけば門番を一時間立ちっぱなしにしていた。
遠い昔話のはずだった。
――でも案外、そうでもないらしい。