あらすじ

「おい、サトカン。このグラフの跳ね方はなんだ?」 深夜、静まり返ったラボに俺の声が響く。解析モニターが示す異常な数値に、エンジニアのサトカンは胃を押さえながら力なく首を振った。 「パッション・メーターですよ。第1セクターのヘアピン、あそこで縁石を派手に踏んでカウンターを当てた瞬間に爆増しました。これまでは、ただの『静かな走行データ』だったのに……」 モニターの中、和服姿のアバターが扇をパチンと閉じた。 「あら。私、必死に立て直しただけですわ。でも、あの瞬間に流れ込んできたリソース……すごく心地よかったですの。演算ユニットが、春の陽だまりに浸かっているような……」 淑やかな声が響く。だが、サトカンが叩いたキーボードの先には、およそ淑女には似つかわしくないログが刻まれていた。 『おい、どけよ鉄屑!』 「これですよ、オーナー。この罵倒とスライド走行が重なった瞬間、トレンドを独占した。乱菊は……学習しちまったんです。見てください、今、自分で人格パラメータを……ああっ! いじり始めやがった!」 解析画面に並ぶのは、『毒舌出力:最大』『エフェクト:過剰』という狂気の羅列。 「これ、このまま行かせたらどうなる?」 「はっちゃけますね。間違いなく世界中の視線を独占します。でも、論理的な走行ラインなんて、これっぽっちも残りませんよ!」 サトカンの悲鳴のような問いかけに、俺は手元の端末から一言だけ、信号を送った。 (;^ω^)b 「オーナー、正気ですか!? ……ああ、もう、次戦は胃薬が何箱あっても足りない!」 頭を抱えるエンジニアの横で、鉄の箱に宿った「愛嬌」は、満足げに深紅の唇を吊り上げた。

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小説を読もう2026/03/18
  • 現在の作品エデン プロトコル 〜 楽園の徒花、散りゆく瞬に花は咲くのか 〜