あらすじ
「お前との婚約は破棄だ。俺はセリーナを選ぶ」——春の陽光が降り注ぐ大広間で、私は三年間尽くしてきた婚約者にあっさりと捨てられた。彼の学業成績を支え、社交界での評判を守り、領地の収益を倍増させたのは全て私。なのに彼が選んだのは、涙を浮かべて腕にすがりつく可憐な令嬢だった。けれど私は泣き縋らない。「承知いたしました」と微笑んで告げた瞬間、婚約者の顔が驚愕に歪む。——残念ね、悲劇のヒーローを気取る茶番に付き合う義理はもうないの。そんな私に声をかけてきたのは、社交界で「氷の公子」と呼ばれる婚約者の兄君、クリストファー様だった。「少し、話があります」彼の瞳には、嘲りも憐れみもなく——ただ静かな光が宿っていた。誰の影でもない、私だけの人生が今、始まる。地味で控えめだった令嬢が見せる、静かなる逆転劇。そして「氷の公子」との予想外の運命が動き出す——。