あらすじ
西暦4200年。人類は、あらゆるものをサブスクリプション化した。
空気。月額500クレジット。解約すると「広告付き」の共用大気に切り替わる。吸うたびに鼻の奥で「プレミアム酸素パック、今なら初月無料!」と再生される。
重力。月額300クレジット。解約すると自分の周りだけ0.8Gになる。コーヒーが不自然に波立つ。
記憶。月額1,000クレジット。解約すると、記憶が段階的に揮発する。名前も、顔も、声も。
感情。プレミアムなら月額800クレジット。スタンダードなら400。深い絶望も大きな歓喜もカットされて、「まあまあ」が精一杯。解約すると——何も感じなくなる。
レン・マクファーレン、32歳。破産した。
残高3クレジット。全人類の12%が陥る「サブスク破産」。人並みの生活に必要なサブスクだけで月額5,000クレジット。ユニバーサル・ベーシック・インカムは月額4,800クレジット。——200クレジット足りない。この「ちょっとだけ足りない」が、絶妙に設計されている。
感情を解約した。「まあまあ辛い」が消えた。楽になった。
記憶を解約した。自分がなぜここにいるのか分からなくなった。
全部解約した。
最後に残ったのは——