あらすじ
十二年間、毎夜三時間の祈祷を捧げ続け、疫病を鎮め、結界を維持し、国を守り続けた神託の歌姫セレナ。しかしその功績は全て『王家の加護』として発表され、彼女の名が民に知られることはなかった。
そして声を失った日――婚約者である王太子エドワードは、満場の貴族たちの前で彼女を『欠陥品』と呼び、追放を宣言する。義妹の毒によって永遠に声を奪われたセレナに、弁明の術はなかった。
だが、全てを失ったその瞬間、一人の男が跪いた。
「貴女の歌声の真の力を知っているのは、この大陸で私だけだ」
隣国アストレア王国の第一王子クロード。かつてセレナの歌声に命を救われた彼は、『欠陥品』と蔑まれた少女の前に膝をつく。
やがてセレナは、声なき音楽という真の力に目覚めていく。竪琴が紡ぐ旋律は、歌声をも超える奇跡を起こし――。
一方、彼女を失ったレグナント王国では、結界が崩壊し始め……。
「今更土下座されても、もう遅いのです」
これは、全てを奪われた少女が真の幸福を掴み、彼女を踏みにじった者たちが報いを受けるまでの物語。