あらすじ
大学一年の夏休み。
映画のトークイベントに友人と訪れた“俺”は、会場でひとりの少女に声をかけられる。
壇上で眩しい照明を浴びていた彼女は、映画で高校生役を演じたばかりの新人女優だった。
「逃げるのを、手伝ってほしいんです」
華やかなイベント会場の隣では、イチゴの祭典が開かれていた。
甘い匂いと人混みに紛れ、友人のバイクでその場を抜け出した彼女を匿ってくれたのは、古いクリーニング店に暮らす眼鏡の少女・透子と、その肝っ玉母ちゃんだった。
服が密集した細い通路の奥、洗剤と熱の匂いが残るその店は、逃亡のための隠れ家であり、四人だけの秘密基地になっていく。
コンビニ、商店街、川辺、祭りの外れ。
外の世界をほとんど知らずに育った彼女は、何でもない夏の景色に少しずつ触れていく。
けれどその自由の背後では、誰かの視線が静かに近づいていた。
やがて四人は、彼女の過去へとつながる山間の街へ向かう。
そこで明かされる秘密と、自分の人生を自分の足で選ぶための決断。
華やかな映画イベントから逃げ出した新人女優と、彼女を匿う三人の若者たち。ひと夏の逃亡は、やがて彼女の過去と“本当の自由”へ辿り着く。