あらすじ
昭和16年。
帝都東京で憲兵少尉として任務に励む佐伯慎一には、誰にも言えない秘密があった。
それは、伝説の陰陽師・安倍晴明の血を引く「異能者」であること。
軍部は彼の力を利用すべく、南方戦線への密命を下す。
表の顔は、マラリア対策の「除虫菊(蚊取り線香)」を売り歩く行商人。
だが真の目的は、日本軍の進駐を阻む「魔の海域」の調査だった。
ジャワの海で佐伯を待ち受けていたのは、マドゥラ島に代々伝わる恐るべき黒魔術(ドゥクン)を操る女海賊、サリ・プトゥリ。
線香の煙が導く「浄化の術」と、荒波を呼ぶ「闇の魔術」。
敵対するはずの二人は、戦火の中で互いの孤独な魂に触れ、抗いようのない恋に落ちる。
終戦、そして祖国からの帰還命令。
軍人としての誇りか、愛する女と生きる自由か。
日本を捨て、インドネシアの独立戦争に身を投じた「青い目の独立英雄」と、彼を支え続けた「マドゥラの魔女」。
100年の時を越え、大家族に囲まれ大往生を遂げた二人の、血と硝煙、そして愛に満ちた壮大な実話ロマン。