あらすじ
「雨の日にしか開かない花屋なんて、商売する気がないのと同じよ」——婚約者の母にそう言い放たれ、三年間尽くした婚約者からも「変わり者」と切り捨てられた瀬尾雨音。しかし彼女の表情に、悲しみはなかった。なぜなら雨音は『雨花師』——雨の日にだけ咲く幻の花々を育てる、日本に三人しかいない特殊な花卉栽培士だったのだ。一輪五十万円の「涙雫草」、予約三年待ちの「雨宿百合」。大切な人を亡くした人々の心を癒す、唯一無二の花を咲かせる彼女の本当の価値を、元婚約者は最後まで知ろうともしなかった。皮肉なことに、彼の祖母は雨音の十年来の顧客だったというのに——。婚約破棄という「解放」を経て、雨音は本来の自分を取り戻していく。そんな彼女の前に現れたのは、雨の日の出会いを大切にする一人の男性。知らなかった者は後悔し、理解してくれる人との新たな絆が芽生える。これは、雨の日にしか咲かない花と共に生きる女性が、本当の幸せを見つけるまでの物語。