あらすじ
神が結んだのは「運命」ではない。「殺意」という名の赤い糸だった。
神の吐息さえ届かぬ境界の地。朽ちた神殿で硬いパンを削る背教者レトの脳内には、絶えず「聖女を殺せ」という深淵の王の声が響いていた 。
そこへ現れたのは、眩いばかりの白を纏った聖女エルセラ。彼女もまた、その清廉な微笑みの裏で「不浄を浄化せよ」という神託のままに、聖銀の短剣を握りしめていた 。
互いの喉笛を食い破るため、手繰り寄せられた血塗られた赤い糸。
だが、殺意が重なるその刹那、二人の間に宿ったのは神への忠誠ではなく、剥き出しの「生」への渇望だった 。
「死ぬなら、貴方の腕の中がいい。……あの方の命令ではなく、私の意志で」
神々の操り人形であることを辞め、獣のように互いの体温を貪り合う二人。
混ざり合う光と闇、背徳の果てに灯ったのは、世界を統べる理さえも焼き尽くす「神殺し」の産声だった 。
これは、神に背き、泥の中で愛を叫ぶ二人の、最悪で美しい反逆の記録。