あらすじ
魔法とは、自身の寿命を代償に発動するものだ。才能ある者は瞬きの間に奇跡を起こし、才能なき者は数十年を一度に搾り取られる。この世界に生まれた少年アルトは、絶望的なまでに「才能なき者」だった。
十六歳の夏、妹を事故から救うために二十五年の寿命を差し出した彼は、一瞬で四十代の肉体を手に入れた。家族の重荷にならないよう、アルトは自ら地下スラムへと姿を消す。
スラムで彼を待っていたのは、悪徳仲介屋による搾取の構造だった。自分の才能のなさを逆手に取られ、他人の命を救うたびに寿命をピンハネされ続けるアルト。それでも目の前の子供が泣いていれば、計算などできなかった。
そんな彼を「理解不能な非効率」として冷ややかに観察していたのが、外見十二歳・実年齢三百歳の魔女ミアだ。徹底した効率主義で三百年を生き延びてきた彼女にとって、損をしながら笑い続けるアルトは、ただの欠陥品のはずだった。
しかしある日、アルトはミアをかばって五年の寿命を焼き切る。泥だらけになったミアの頭を撫でて、老いた少年は笑った。
「お前まだ子供だろ。大人が子供を守るのは、当たり前じゃないか」
三百年間、誰にも言われなかった言葉だった。