あらすじ
25歳の晴海綾乃は、七星商事に勤める入社4年目の営業事務。
家庭崩壊の中で自分を救ってくれた“先生”を中学時代に亡くし、
その番号に毎晩21時、留守電へ語りかけることで心の均衡を保っていた。
社会人になった4年前、
もう終わりにしようと最後にかけたその番号が偶然つながり、
以来、綾乃は“無言の持ち主”に甘えながら、
先生への想いを留守電に吹き込み続けている。
そんな綾乃の部署に、新人の上嶋宏堵が配属される。
教育係を押し付けられた綾乃は戸惑いながらも、
上嶋の爽やかさと落ち着いた態度に不思議な既視感を覚える。
挨拶回りの途中、階段で足を踏み外しそうになった綾乃を、
上嶋は強く抱き寄せて救い上げる。
その耳元で囁かれた言葉。
「会いたかった……綾乃」
その声は、
綾乃が“もう二度と聞けないはずの声”にあまりにも似ていた。
混乱する綾乃をよそに、
上嶋は真剣な瞳で告げる。
「晴海綾乃さん。これから、あなたを落とすので、覚悟して下さい」
新人とは思えない強引さと熱を持つ上嶋。
綾乃はその瞬間、
自分の平穏な日常が終わる音――“シンデレラの鐘”が鳴った気がした。