あらすじ
余命三ヶ月を宣告された花屋の店主・柊咲良には、誰にも言えない秘密があった。――花の声が、聴こえるのだ。水を求める薔薇の囁き、誰かに届けられたがっているガーベラの願い。その不思議な力で祖母から継いだ小さな花屋を十年間、たった一人で守り続けてきた。けれど病に蝕まれ、花の声は少しずつ遠くなっていく。買収を迫る大手フラワーショップ、「意地を張るな」と諭す幼馴染。誰も咲良の本当の価値を分かってくれない。静かに店を畳もう――そう決意した矢先、一人の植物学者が店を訪れる。「この花の組み合わせ……あなたには、花の声が聴こえるのですか」彼だけが、咲良の力の意味を理解した。孤独だった花屋の最後の三ヶ月が、思いもよらない方向へ動き出す。今さら手のひらを返してきた人たちに、もう振り回されない。自分の価値を認めてくれる人と歩む、新しい春の物語。