あらすじ
「お前といても退屈なんだよ」——三年間を共にした婚約者にそう言い捨てられ、親友だったはずの女に寝取られた香坂澪。追い打ちをかけるように、祖母から受け継ぎ、三年かけて集めた大切な古書コレクションまで奪われてしまう。
地味で、暗くて、本ばかり読んでいる。そんな自分に価値などないのだろうか——傷心のまま雨の中を歩く澪は、都市伝説でしか聞いたことのない「雨の日にだけ現れる古書店」に辿り着く。
そこで出会ったのは、不思議な雰囲気を纏う青年店主・蒼。彼の店には、世間から忘れ去られ、傷つき、見捨てられた本たちが静かに息づいていた。
「本は届けられなくても、想いは届く」
蒼の言葉に導かれ、澪は傷んだ本たちの「声」を聴き始める。そして気づいていく——自分が本当に大切にしてきたもの、自分だけが持つ価値、そして祖母から受け継いだ「紙の医者」としての使命に。
これは、すべてを失った女性が、雨の古書店で本当の自分を見つけ、前を向いて歩き出す物語。
——今さら「謝りたい」と言われても、私はもう振り返りません。