あらすじ
冬の京都、白川疏水沿いの古いアパートに一人で暮らす若い女性・アヤ。彼女は長年にわたる摂食障害を抱えており、極限まで痩せ細った自分の体を鏡で確認することに、歪んだ安堵を覚えていた。
その背景には、「女は限りなく透明に近くなければならない」と囁き続けた母の存在があった。母自身も同じ強迫観念に縛られており、その呪いはアヤへと静かに受け継がれていた。かつて傍にいた恋人・タカシも、アヤの体を案じながら去っていった。
そんなアヤの部屋で唯一、命の気配を放っているのが、一匹の淡水フグ「プク」だ。ふっくらと丸く、旺盛な食欲で赤虫を貪るプクの姿は、かつてアヤの心の拠り所だった。しかし冬が深まるにつれ、アヤのプクへの眼差しは少しずつ変わり始める。
ある夜、アヤは突然の眩暈に襲われ、床に倒れ込んでしまう——。
果たして、朝を迎えたアヤとプクはどうなっているのか。水槽の光だけが照らす静かな部屋で、生と死をめぐる対比が静かに浮かび上がる。