あらすじ
戦争末期の山村。少年景司は、食べるものも乏しい時代に「松根油」を採るため、松の根を掘る作業に駆り出されていた。腹を空かせながらも土を掘り続ける日々。だが戦争は終わり、松根油は不要になり、村にもゆっくりと新しい時代が訪れる。そして畑を耕し始める。彼の作る野菜はどこか曲がっている。だが景司はそれを「人生大根」と名付け、笑って売った。年月が流れ、孫の翼が畑に立つようになる。松の根を掘った飢えた少年の日々は遠い記憶になった。しかし土の匂いは変わらない。曲がった野菜のように、人の人生もまた真っ直ぐではない。だが遠回りの先には、必ず春が来るのだと、景司は静かに土を耕し続ける。