あらすじ
ガタッ。
ゆっくりと、ようやく彼が立ち上がる。
革靴の底が床を踏む重い音。
一歩、近づく。
「子猫みたいで……可愛いな」
丸くなった私に、
距離が縮まる。
彼の体温が届く。
香水とスーツのウールの匂いが混じる。
指先が、まだ触れない。
でも、もうすぐ。
「……紗和」
欲望を抑えきれてない、
囁く掠れた声。
名前を呼ばれただけで、膝が震える。
「今度は、俺の番。……いい?」
吐息混じりに、耳に落ちる。
玄関の灯りの下。
乱れた呼吸。
チョコレートは、まだ渡していない。
けれど今夜いちばん甘いのは――
きっと、私のほうだ。
成海の指が、やっと私へ伸びた。
靴も履いたまま、
熱い視線で私を見ながら。
スーツ姿の完璧な鎧のまま、
たぶん今夜もこれから……
ずるいのはわたし?それとも彼?
https://estar.jp/novels/26354471 (出会い編)