あらすじ
二浪、二十歳。僕の人生は、ずっと「保留」のままだ。
外の世界の光が眩しくて、予備校の息苦しい生活から抜け出したかった。
勉強して、受かればいい。
単純なこと、わかっていても若者の怠惰と快楽への欲求からは逃れられない。
教科書を閉じて逃げ込む図書館の隅、SNSで見るキラキラした若い経営者たち。
自分もきっとできる。
「無限の可能性」に焦がれては、白紙の模試解答用紙とのギャップに絶望する毎日。
熱意なんて、自分を表す言葉じゃないと思っていた。
そんな停滞した霧の中に、彼女はいた。
同じ予備校に通う、中村ひとみ。
僕と同じようにどこか欠けた空気を感じさせる彼女との出会いが、色を失った僕の生活を少しずつ変えていく。
彼女の隣にいる時だけは、未来という不確かなものを信じてみたくなった。
けれど、浪人生という「期間限定」の時間は、残酷に終わりへと向かっていく。
「何者でもない」僕たちが、不器用に見つけた恋の行方は――。
「ねえ、私たちはどこにだって行けるよ」
その言葉の本当の意味を、僕はまだ知らなかった。