あらすじ
婚約者アルヴェスに初めて会った日、子爵令嬢エレノアはこう告げられた。
「私の理想の淑女は、亡き大伯母上だ」
尊敬する相手を手本にするのは悪いことではない。
そう思っていたエレノアだったが、婚約後に待っていたのは、笑い方、歩き方、服装、趣味、手紙の筆跡に至るまで“亡き大伯母”に似せることを求められる異様な日々だった。
果ては流行遅れのドレスを着せられ、社交界でも恥をかかされる始末。
アルヴェスが求めているのは婚約者ではなく、理想化された故人の代用品だと気づいたエレノアは、静かに反撃を始める。
「わたくしは、誰かの思い出の器になるために生きているのではありません」
婚約者の歪んだ価値観は社交界に知れ渡り、やがて侯爵家すら巻き込む騒動へ。
過去に囚われた男と決別し、自分自身の人生を取り戻そうとする令嬢の、静かで痛快な婚約解消劇。