あらすじ
世界から「空気」が消え、万物が「音」で構成されるようになった時代。
この空の下、沈黙は「死」であり、轟音は「生命」そのものだった。
巨大な楽器を船体に冠した音響艦隊が空を焼き、人々の叫びが熱エネルギーとなる狂った戦場。
その中心を、一艘の小さな小舟がゆく。
乗っているのは、生まれつき耳の聴こえない少年――レゾ・デコード。
音の洪水に晒されながらも眉ひとつ動かさない彼は、この世界で唯一、音を「聴く」のではなく、空間に刻まれた「波形(ソースコード)」を「視る」ことができた。
数万の兵士が放つ死の合唱を、レゾは指先一つでデコード(解読)し、無害な静寂へと書き換えてしまう。
「……うるさいよ。そのノイズ(戦争)、僕が消してあげる」
彼が目指すのは、敵国・シレンツィオの最奥に聳える『沈黙の塔』。
そこには、歌えば周囲の生命を吸い取ってしまう呪い――フェルマータ(終止符)を宿すがゆえに幽閉された、孤独な王女・シエルがいた。
耳の聴こえない調律師と、歌うことを禁じられた王女。
二人の手が重なったとき、止まっていた彼女の時間(旋律)が動き出し、偽りの音に満ちた世界に「真実の色」が蘇る――。
これは、孤独な少年がその指先で世界を書き換え、最強の「楽団(ギルド)」を築き上げていく