あらすじ
2000年代初頭に勃発した第3次世界大戦は、2009年に終結。
世界各地で核兵器が使われたため、戦禍からの復興には、長い年月が掛かった。
終戦から、およそ70年後。
2080年、6月。トーキョー。
裏社会を牛耳る組織・サルコーマの構成員であり、猟犬(ハウンド)を務めるフユトは、組織のボスであるシギと、交際4年目を迎えていた。
恋も仕事も順調なフユトは、ある日、歓楽街の片隅で、少女に「身体がぶつかった」と因縁をつけられる。
少女は15歳という年齢ながら、自ら親元を離れ、単身、都心へ出てきたという。
奢ってやったものを貪るように食べる少女を見て、フユトは彼女に、かつての自分を重ねずには居られなかった。
フユトは孤児である。
8つのときに母を喪って以来、双子の兄とともに、瓦礫の散らばる無法地帯で生き延びてきたのだった。
そんなフユトを拾ったのが、恋人であり、サルコーマ最高幹部であるシギ。
彼には、国内の財閥大企業、『川原ホールディングス・グループ』CEOの顔があると同時に。
国家権力と繋がり、裏社会でも強大な権力を誇る、『魔王』の顔がある。
知性、財力、美貌を兼ね備え、完全無欠とも言うべき男に飼われながら。
フユトは、孤独な少女と交流を深めていく。
やがて、少女から友人として、ハルを紹介されるが。
ハルは、身近なおとなである両親に振り回された挙げ句、壮絶な苦しみを背負ったことをフユトに打ち明ける。
孤独な少女の願い。
苦痛のすべてを終わらせたいハルの希望。
フユトは少女ふたりに、子どものころから見てきた地獄を重ね合わせる。
葛藤するフユトを出迎えた恋人は、甘く微笑み、悪魔の囁きをした。
「戻ってきたら、一緒に風呂でも入ろう」
フユトは、ハルの希望を聞き届ける道を選ぶ。
しかし。
ハルの依頼を遂行するフユトから娘を庇い、母親が命を落とした途端。
彼女の喉から迸ったのは、慟哭と、拒絶だった。
恋人と暮らす部屋に戻ったフユトは憔悴していた。
これまで、自分の仕事を嫌悪したことも、罪悪感を抱いたこともなかったが。
今回ばかりは、他の道がなかったかと、後悔していた。
仕事を辞めると宣言するフユトに。
笑いかける恋人は執着心を剥き出しにし、監禁して飼い殺す未来を仄めかす。
「……うん」
恋人の提案を受け入れたフユトだったが、実際に監禁されることはなく。
2年後。
サルコーマ幹部に昇進を果たし、最高幹部の右腕として、立場を不動のものにしていた。
そんな折に引き受けた、単価の安い依頼で。
頼りない見た目ながらも、凶暴性を秘めた青年と邂逅する──。
地獄の底で出会ったフユトとシギの共依存と。
社会の片隅で懸命に生きる少女たちの絶望と希望。
人間のズルさと弱さ、強さとひたむきさを描くピカレスクBLは。
フユトと、頼りない見た目の青年の邂逅によって、ノワールへと接続していく。