あらすじ
拍手はなかった。
十五歳の授命の儀。少年の胸から溢れた命路は——七つ。
一つならば祝福。二つでも珍しくはない。だが七つは、前例のない災厄だった。
伯爵家次男アッシュは、その日すべてを失った。
名前を消され、爵位を剥がれ、婚約者には「無名と婚約した覚えはございませんわ」と切り捨てられる。
母は言った。「聖炉で焼却すべきです」——我が子を、焼けと。
父は沈黙し、兄は一言だけ残した。「振り返るな」
妹だけが泣き叫んだ。「みんな嘘ついてる!」
追放先は灰と荒野の果て——灰燼郷。人口二百の棄てられた土地。
幼馴染の侍女フィオナだけが家を捨てて付いてきた。
「お仕えすると決めたのは、家ではなく、あの方です」
だが焼かれたはずの七つの命路は、死んでいなかった。
剣士、魔術師、商人、職人、道化、密偵、聖騎士——七つの人生を生き終えた「残火」たちが、魂の奥で目を覚ます。
荒れた畑を耕し、壊れた水車を直し、腐敗した前任の帳簿を暴く。
命路なしの無名が、灰の領地で這い上がる追放×領地経営ファンタジー。
——そしていつか少年は知ることになる。
あの日の追放が、本当は何だったのかを。