あらすじ
あの街には、抜け道がない。
平成〇年、東京都H市の“■■山”で中学二年生の男子が消えた。
事件は未解決。地元では神隠しと囁かれている。
かつてH市T字路周辺事案を調査した佐藤は、偶然その事件を知る。
ネット掲示板、週刊誌記事、地元紙の縮刷版――どれも曖昧で、核心に触れない。
だが調べるほど、奇妙な事実が浮かび上がる。
市内で繋がらない鉄道路線。
隣県を経由しなければ外へ出られない構造。
頓挫した大規模宅地開発。
放棄された造成地。
山麓に残る旧■■山病院。
そして、明治・大正にも存在した“子供失踪”の記録。
H市は、都心に近い。
だが、どこにも抜けない。
それは偶然か。
それとも、何かを外へ出さないための構造か。
佐藤は、錆びたフェンスで遮られた某山へ向かう。
そこには、あの夜と同じ空気があった。
神隠しは存在するのか。
それとも、消えるのは人ではなく、真実なのか。
これは一件の未解決事件を追う記録であり、
境界線に囲まれた都市の観測報告である。
結論は提示されない。
本資料は、あくまで観測記録である。