あらすじ
四十歳で死んだ日本人は、荒れた奴隷商《灰枝亭》の若主人ユリウスとして生き返った。
店は回っている。だが不潔で、客筋は悪く、女たちは壊れるのを待つように売られていく。父は早く捌けと言い、同業者は噂で値を落とす。そんな場所でユリウスは、前世の知識と商人の目を武器に、女たちをただ流すのではなく、湯、布、食事、言葉、そして客の選別で整え始める。
若さや見た目だけで値札を付けるのではない。何を失い、何に怯え、どこならまだ壊れずに済むのか。ユリウスは女たちの値打ちを見立て、相応しい値と相応しい行き先を探していく。時には最後の夜にだけ、自分で選ぶ権利を残したまま。
これは、全部は救えない場所で、せめて最悪ではない先へと女を送り出す、転生若主人の静かな頭脳戦である。救済では終わらない。だが、値踏みと見立ての先にだけ残せる尊厳がある。