あらすじ
最初に壊れたのは、世界ではなかった。
測定だった。
国立標準研究所で光格子時計を扱う白瀬澪は、説明不能なズレを観測する。
しかも異常は、干渉計、超伝導素子、量子乱数発生器と、分野の違う装置で同時多発していた。
老数学者・真鍋が告げた仮説は、あまりにも非常識だった。
――世界の公理が、書き換えられようとしている。
鍵を握るのは、数学の未解決問題として知られる「連続体仮説」。
証明も反証もできないはずの命題が、なぜか現実の“濃度”を決めているというのだ。
だが真実は、それだけでは終わらない。
この世界は終わるのではない。
同じ顔をした別の世界に、静かに置き換わろうとしている。
数学の真偽と、失いたくない日常。
そのどちらを選ぶのかを迫られたとき、白瀬澪は自分が何者なのかを知る。