あらすじ

一九五七年。戦後十二年の東京に、一人のフランス人女性が降り立つ。  エリーズ・マルシャン、構造技師。  エッフェル塔を建てた鍛冶工の孫。  彼女の任務は、エッフェル塔を超える三三三メートルの鉄塔——東京タワーの建設を見届けること。  工期十八ヶ月。大型クレーンはない。コンピュータもない。一万枚の図面はすべて手計算。焼けたリベットを二十メートル先に投げ、素手でキャッチし、ハンマーで叩く。幅三十センチの鉄骨の上を、命綱なしで歩く男たち。  「ケガと弁当は自分持ち」——それが鳶の流儀だった。  合理主義では測れない現場に、エリーズの常識は何度も砕かれる。  一五ミリのズレをジャッキで押し込む夜明け。  突風が奪う一つの命。  そして三三三メートルの頂上から見た、オレンジ色の東京。  のべ二十二万人が積み上げた鉄塔は、なぜ建ったのか。  その答えを、彼女はついに数式で書くことはできなかった。  そして、その必要もなかった。

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カクヨム
カクヨム2026/03/15
  • 現在の作品【東京タワー建設短編小説】鉄と足袋と三三三メートル(約22,000字)