あらすじ

《※本作は、作者が東日本大震災直後に体験した避難の記憶を下敷きにしたフィクションです。登場人物・地名・時間軸・出来事等には、物語化にあたって創作および再構成を含みます。》 東日本大震災から一週間後。 高校生の桐谷恒一は、又従姉であり、初恋の相手でもあった伊達華怜が、宮城県石巻市で津波に巻き込まれて亡くなったことを知らされる。 あまりにも遅く、あまりにも一方的な別れだった。 好きだったと一度も言えないまま、また会えると信じたまま、恒一は彼女を失った。 時間は少し遡る。 2011年3月11日、恒一は親類の葬儀のため、福島県いわき市泉町にいた。 数日前から続いていた地震に、誰もが小さな不安を覚えながらも、それを「前触れ」とは思っていなかった。だが本震直前、彼の持つ緊急地震速報対応の最新式ガラケーが鳴る。耳慣れない警報音に押されるように建物の外へ出た数秒後、世界は未曾有の揺れに呑まれた。 津波の恐怖、途絶える連絡、動かない車列。 恒一は海沿いを避け、旧六号国道を南へ歩く。泉町から植田町、窪田町、勿来町、勿来の関を越え、北茨城市関本町へ向かう山道を抜けて、祖父の家のある関南町へ。 寒さと余震と情報不足のなかで辿り着いた停電の家で、彼は長い長い被災当日の夜を過ごすことになる。 ラジオから流れる断片的な被害情報。 灯りのない部屋。 見知らぬ人との短い会話。 そして、たまたま助かった自分だけが生き残ってしまったという、どうしようもない痛み。 これは、東日本大震災の「あの日」を描く物語であると同時に、 あの夜を生き延びた者が、喪失と罪悪感を抱えながら、それでも朝を迎えるまでの物語である。

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小説を読もう2026/03/15
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