あらすじ
東京で二人の息子を育てるシングルマザー・伊澄。
ある冬の夜、故郷の村に暮らす母と電話を交わす。
「やんだした、いすみ。春になったら帰っておいで」
それが、母の最後の言葉になるとは思っていなかった。
年が明けたある日、実家から一本の電話が入る。
「お母さん、倒れだの」
雪に閉ざされた東北の村へ帰った伊澄は、葬儀のあと実家の二階で母の遺した「白い箱」を見つける。
箱の中に入っていたのは、赤い表紙の日記帳と一通の手紙。
そこには、伊澄が知らなかった母の人生が静かに綴られていた。
これまで伊澄は、母を「弱い人」「毒親かもしれない」と思い続けてきた。
けれど日記帳を読み進めるうちに、母が孤独の中で娘を守ろうとしていたことを知る。
雪深い村の記憶と、東京での現在の暮らし。
過去と現在を行き来しながら、伊澄は母の本当の姿と愛に気づいていく。
これは、母が遺した言葉に導かれながら、
娘がもう一度人生を歩き直す物語。
「やんだした、いすみ」
その一言が、凍っていた心を少しずつ溶かしていく。