あらすじ

午後4時の受け子

**~名張・1300万円だまされた振り作戦~**

夕暮れが忍び寄る 名張の街角
定年後の静寂を 光ファイバーが切り裂き
「あなただけ」と囁く 見えない指先
画面の中の数字は 嘘の命を宿して増えていく

かつて教壇で 正義を説いた口唇が
今は 絶望を飲み込み 沈黙を守っている
一千万を超える 重すぎる紙の束
それは かつての教え子を見捨てた 私の罪の重さか

午後四時
鉄筋の乾いた音が インターホンに響く
モニターに映る 所在なげな二つの影
一人は 人生を摩耗させた初老の男
一人は 言葉を奪われた異国の若者

「お茶でも、いかが?」
震える手で淹れた 苦いだけの時間は
被害者と加害者の 境界線を溶かしていく
リビングに漂う 安物の煙草の匂いと
スマホの中で急かす 「K」という名の怪物

「あなた、恥ずかしくないの?」
その一言は 誰に向けた矢だったのか
金を掴もうとした指が 止まる
鏡合わせの孤独が 西日に焼かれて露わになる

突入の怒号 砕け散る日常
組み伏せられた背中に 私はかつての少年を見る
捕まったのは 糸に操られた木偶(でく)ばかり
黒幕は今も 異国の風の中で笑っている

警察署の階段を下り 見上げる名張の空
「お金は戻らない」と 刑事の背中が語る
けれど、失くした誇りを 私はこの手で手繰り寄せた
私は、私に戻ったのだ

不意に震える ポケットの孤独
画面に浮かぶ 一文字の「K」
戦いは まだ終わっていない
夕闇の向こう側 次のアポイントメントが 牙を剥く

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アルファポリス
アルファポリス2026/03/15
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