あらすじ
地方の町で静かに暮らす景司は、ある日ふとしたきっかけで川のゴミ拾いを始める。誰に頼まれたわけでもなく、報酬もない。ただ日曜日になると軍手と火ばさみを持って土手を歩き、黙ってゴミを拾うだけだった。
しかし町では様々な噂が広がる。「自己満足ではないか」「親切の押し付けだ」「選挙に出るつもりか」。善意は時に疑いの目で見られ、景司も何度もやめようと考える。そもそも自分はなぜこんなことを続けているのか、その理由さえ分からなかった。
迷い続ける日々の中で、川で遊ぶ子どもの一言や、きれいになっていく水の流れを見つめながら、景司はようやく気づく。立派な理由などない。ただ、自分はそうしたい人間なのだということに。
人に語ることもなく、名誉を求めることもなく、景司は今日も川を歩く。名もなき小さな行いが、静かに町の風景を変えていくのだった。