あらすじ
2029年
ある一人の天才的な気功師が「気」の概念を変えた。
混元祖師《こんげんそし》と名乗る彼の導きによって一般人もその「気」の恩恵にあずかる。
始めは小さな変化だった。
盲目の者が透視能力に目覚め、世界が見えるようになり、
聴こえない者や語れない者が伝心術で互いに意思を交わせるようになり、
手足が動かない者は念動で四肢や義肢を操ることができるようになった。
小さな奇跡の連鎖は、やがて日常となった。
世界は、知らず知らずのうちに変わり始めていた。
そして2035年――さらなる進化が訪れる。
人々は自らの気を凝縮し、自分の分身―霊神《れいしん》―を顕現させられるようになったのだ。
霊神はただの幻影ではない。
それは人間の気に、宇宙自然に眠る神格を映しだした存在。
物理世界に干渉し、能力を発揮する。
高位の守護霊神ともなれば、まるで神そのものの力を持つ。
社会のあらゆる問題は、霊神の出現によって解決されていった。
災害の救助、医療の補助、建設や治安の維持――
人々は霊神と共に、新たな世界を築きつつあった。
しかし同時に、人間の欲望は変わらない。
霊神を悪用する者たちが現れ、力の暴走や犯罪、争いもまた増えていく。
世界は――奇跡と危険の狭間で、新しい時代の幕を開けようとしていた。
そんな霊神開花の時代、霊神を顕現できない、ただ一人の少年がいた。
古賀桜介《こがおうすけ》――世界の奇跡から取り残された少年だった。