あらすじ
青春は、溺れるには十分な深さだった。
透き通るほどに、残酷。
それは友情の顔をした、捕食だった。
『僕らの青春は、誰かのゴミ箱の中』
誰一人として、相手を「人間」として見ていなかった。
これは、逃げ場のない「水辺」の名前を持つ四人の少年が、互いの欠落を埋めるように噛み合い、やがて共食いへと沈んでいく、湿った記録。
そしてその記録は、いつのまにか誰かに見られていた。
四人の少年
波多野 凪(はたの なぎ) — 無邪気な中心
底抜けに明るく、よく笑う少年。
沈黙を怖がり、騒ぎ続ける。
「面白いこと」を探しては、周りを巻き込んでいく。
ただし彼は、まだ知らない。
その「面白いこと」が、どこまで行くのかを。
浅瀬 怜(あさせ れい) — 透き通った優等生
誰にでも優しく、誰からも好かれる。
笑っているのに、何を考えているのか分からない少年。
人をよく観察する。
ただ、それが興味なのか、実験なのかは誰も知らない。
深津 結(ふかつ ゆう) — 神を欲しがる少年
どこか儚げで、静かな少年。
怜のそばにいることで、自分の存在を保っている。
彼にとって怜は、友達ではない。
もっと別の、名前のつかないものだった。
淵上 朔(ふちがみ さく) — 観測者
クラスメイト。
いつのまにか、そこにいる。
卒アル委員として、日常をカメラで記録している。
シャッターは、いつも静かに切られる。
その瞬間、誰かの表情が、誰かの関係が、保存される。
そして一度記録されたものは、二度と消えない。
そのレンズに気付いていても、気にするほどのことのものではないと思い込んでいた。
あの夏
プール掃除の午後。
塩素の匂いと、眩しすぎる水面。
青い空の下、プールの底にはヘドロが沈んでいた。
光る水飛沫。透ける制服。
その境界で、僕たちはお互いを「エサ」だと認識した。
友情という皮膜の下で、支配と執着が加速していく。
ーーカシャッ。
凪は無邪気に水をばら撒き、怜の口付けさえも意味を理解せず笑い飛ばす。
その光景を、結が憎悪で見つめ、朔が静かにシャッターを切る。
誰もが羨むような「眩しすぎる青春」の1ページ。
決して明けない夜
保健室のカーテンの向こうで、取り返しのつかない何かが起きた。
そしてすべては、少しずつ壊れ始める。
友情は執着に変わり、無邪気さは暴走し、観察は記録になり、記録は保存され、保存されたものは――やがて拡散される。
カメラは、まだ回っている。
誰かがそれを見ている。
そして、いつか。
この青春もきっと、どこかのタイムラインの底で、誰かの記憶へ静かに沈んでいく。
ーーカシャッ。
今日もシャッター音は鳴り続けていた。
「……バズるかな!?俺たちの、この最高な人生!!」