あらすじ
【物語紹介】二番アイアン
「一本、足りないわね」
その一言が、静謐な日常を鋭利に切り裂いた。
ゴルフバッグに帰還した四番アイアンの、醜く歪んだネック。溝にこびりついた、芝でも土でもない「赤黒い汚れ」。そして、忽然と姿を消した、外科手術用のメスのように薄く冷たい二番アイアン。
夫の語る「守るための嘘」は、深夜のキッチンで真っ赤に焼けた鉄の断末魔とともに砕け散る。
そこに現れる、純白の鑑識用手袋をはめた「観測者」という名の刑事。
舞台は、月光に照らされた志乃原カントリークラブ。
十六番ホールの漆黒の池(ハザード)は、裏切り、癒着、そして女の激情を飲み込み、完璧なスコアカードへと書き換えていく。
これは、美しき狂気に目覚めた妻が、自らの手で人生のセカンドショットを打ち放つまでの、五日間の記録。
「さあ、お帰りなさい。その『汚れた道具』を持って。」
読者の呼吸を乱し、生理的な戦慄を呼び起こす至高のハードボイルド。
あなたは、この池の底に沈む真実を、直視する勇気があるか。