あらすじ
人の感情が「タグ」として見える能力——
それは石原久希にとって、呪いだった。
五月の朝、泉方橋。
彼は、一人の少女が欄干を越える瞬間を目撃する。
次の瞬間——
少女も、その痕跡も、すべて消えていた。
翌日。
彼女は何事もなかったかのように学校に現れる。
時間を止めることができると名乗る少女、緒山朋奈。
明るくて、優しい。
だけど久希だけは気づいてしまう。
彼女の感情タグだけが、いつも壊れていることに。
時々、彼女が泣いていることに。
そして——彼女が、この世界から「消えよう」としていることに。
異能力を持つのは、彼女だけじゃない。
存在が薄れゆく後輩・立花美里は、
服を着替えるたびに「誰かに見えなくなる」。
完璧を求める会長・春野陽明は、
危険を避けるたびに、その代償を仲間に押し付ける。
妹のために自分を消そうとする少年・朝日守は、
星空を創るたびに、ひとつずつ感覚を失っていく。
彼らは皆、
誰かの手を必要としている。
あの朝、彼女を「見た」のは偶然ではなかった。
彼女はかつて、誰かに救われている。
そして、その「誰か」は——
もう覚えていない。
これは、
異能と代償に抗いながら、
互いに手を伸ばす物語。