あらすじ
特殊清掃業者として働きながら、密かに「掃き屋」として未練を残した死者を弔う主人公。ある日、夫を亡くした如月さんという女性から、夫の気配が残る部屋の清掃を依頼される。
部屋には、自分の剥がれ落ちた存在の欠片を拾い集める夫・誠一の霊が「澱」となって留まっていた。主人公は特殊な線香を使い、生前の記憶と匂いを媒介にして、妻に最後のお別れの機会を与える。
しかし、愛ゆえに死者を繋ぎ止めようとする妻の願いは、かえって死者の霊を苦しめることになる。主人公は冷徹な本音を隠しながら、残酷なまでの現実を突きつけ、霊を「あるべき場所」へと還す。
最期に夫が残した感謝の言葉は、本物だったのか、それとも線香が見せた幻だったのか。強烈な線香の匂いと深い喪失感の中、主人公は再び日常へと戻っていく。そこには、割り切れない想いと、自身の指先に染み付いた死者の記憶だけが残されていた。