あらすじ
夫の実家が営む温泉旅館――その日本庭園で、私、大里伊織は決定的な裏切りを目撃した。
夫と、見知らぬ女。
怒りと絶望のまま「離婚」を言い渡し、二歳の息子・理玖を抱えて家を飛び出した。軽自動車で温泉街を抜け、山あいの道を走る――そのときだった。
空から、青い花びらが静かに舞い降りる。
やがて視界の先に現れたのは、現実ではありえない“青いバラのアーチ”。
吸い寄せられるようにその下をくぐった瞬間、世界は変わった。
辿り着いたのは、小さな小人たちが暮らす不思議な村。
混乱の中で告げられたのは、長老の信じがたい言葉だった。
「お前さんの腕の中におる、その小さき者こそが――賢者様ですぞ」
理玖が賢者?
戸惑う間もなく、私は幼い理玖と共に“先代賢者の住処”だったという家へと案内される。
裏切りから始まった逃避行は、未知の世界、異世界への序曲だったというのか。
こんなこと望んでない。
だけど、理玖を守るため、私はできる限りのことをしようと心に誓うのだった。