あらすじ

その男は世界一のマジシャンだった。 男は意識が朦朧としている中、自分が死んだということを思い出した。 それと同時に、笑いが込み上げ……最後に蒔いた種の花が咲く所をこの目で見られないことを心底残念に思った。 そして……聞こえてくる赤子の声。 男は思った。 自分は死んでいなかったのか? と。 途端にさっきまでの興奮が冷めていくのが分かる。 何故なら……もう男が最後に撒いたと思っていたマジックはとっくに披露されているはずだからだ。 男は目立つのは好きだが、恥をかいて目立つのは好きでは無いのだから。 だが、直ぐに違和感に気がついた。 そして自分が転生というものをしたのではないか? ということに気が付き、唖然としていると……それは起こった。 恐らく今世の男の母であろう人物が指先に火を宿し、ロウソクに火を付けたのだ。 たったそれだけのこと。 男とて、種さえあればそんなこと簡単にできた。 だが、世界一のマジシャンだと言われ、世界一のマジシャンだと自分でも名乗ってきた男だからこそ分かった。 それには種や仕掛けなんてものは存在せず、紛うことなき、本物だということが。 あの時、あの瞬間から、男はずっと、恋に焦がれてきた。本物の魔法という存在に。 だが、成長していくにつれ、男は諦めてしまった。 魔法なんてものは存在しないのだと、諦めてしまった……本物の魔法が今、目の前にあった。 男は感謝した。 あぁ……ありがとう、神様。 本物がある世界に私を連れてきてくれて、ありがとう、と。

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カクヨム
カクヨム2026/03/13
  • 現在の作品世界一のマジシャン、何のチートもなく異世界に