あらすじ
17歳の高校生、神崎瑠衣。長いまつ毛と中性的な顔立ち、細くしなやかな体つきのせいで、彼は幼い頃から女の子と間違われ続けてきた。否定すれば笑われ、期待されれば失望される。そんな経験を重ねた彼は、いつしか自分の容姿を「想定内の誤解」として受け入れ、他人と距離を置く「達観」という名の孤独を選んで生きていた。
しかし、同じクラスの人気者、飯田優香との出会いが、彼の静かな日常を揺り動かす。優香は瑠衣の容姿を特別視することなく、一人の「男の子」として、そして「瑠衣」という個人として親身に寄り添う。彼女の太陽のような明るさに触れ、瑠衣は初めて自分を肯定する喜びを知り、一人称を「僕」に変え、繊細な恋心を募らせていく。
文化祭、水族館、そして放課後の図書室。積み重なる思い出の中で深まる二人の絆。だが、瑠衣の心に根付いた過去の傷は、優香の「守りたい」という無垢な優しささえも、時として重荷へと変えてしまう。
「君の隣にいると、僕は弱い僕のままだ――」
愛しているからこそ依存し、愛しているからこそ自分を見失う。繊細すぎる少年が、本当の自立と強さを求めて下した、あまりにも切ない決断とは。
美しくも残酷な、成長と別れの物語。