あらすじ
役所勤めの景司は、親友・正義の裏切りによって職を失い、人々の嘲りと蔑みの中へ突き落とされた。聞こえよがしの陰口、冷たい視線、そして社会からの放逐。景司は正義を深く恨みながらも、その恨みを表に出すことなく、村で孤独な生活を始める。年月は流れ、恨みは消えぬまま心の奥に沈殿していく。やがて正義の死を知り、遺された日記から彼の苦悩と弱さを知る景司。しかしそれでも赦すことはできない。ただ、恨みの形は変わっていった。景司は村の子供たちに文字を教え、静かな日常の中で生き続ける。赦しでも忘却でもない、「赦しの外側」に立ちながら、それでも人は生きていくことができるのか。裏切りによって壊された人生の果てに、景司が見つけたのは、救いではなく、それでも続いていく時間そのものだった。