あらすじ
五十歳になった男には、子どもの頃から忘れられない一匹の野良猫がいる。
茶黒のまだら模様、裂けた右耳、白い尻尾の先。
近所の老人に引き取られたその猫は、何年経っても、まるで年を取らなかった。
やがて老人は亡くなり、町並みも変わり、猫のことも記憶の奥へ沈んでいく。
だがある日、帰省した主人公は、昔とまったく同じ姿の猫を再び見かける。
古い写真の隅に写り込む、同じ猫。
「やっと戻ってきた」と記された一枚。
そして主人公は気づき始める。
あの猫は、この町でずっと誰かを見送り続けてきたのではないか、と――。
懐かしい夕暮れの路地に潜む、やさしさと不気味さが同居する洒落怖。