あらすじ
あらすじ
進学校での冤罪事件により、家族からも社会からも「汚れ物」として切り捨てられた少年・蒼真。
希少な身体的特性を抱え、父の歪んだ愛と世間の理想に縛られ「完璧な女神」を演じ続ける少女・凪。
道路一本を隔てたアパートとマンション。
二人は夜ごと、窓の明かりを点滅させる“生存確認”を交わし、名前も知らぬまま唯一の理解者となっていく。
やがて出会った二人は、自分たちを「欠陥品」と断じた世界に対し、言い訳の余地を与えない反撃を選ぶ。
目指すのは、国立医学部現役合格。
孤独と偏見、過去の亡霊に苛まれながらも、互いを「生きるための空気」と呼び、泥を啜るように歩み続ける。
これは、救われる物語ではない。
自らの手で尊厳を奪い返し、互いの世界にとっての“神”となるまでの記録である。
登場人物
七瀬 蒼真(ななせ そうま)
元進学校の特待生。ある「盗撮事件」の濡れ衣を着せられ、教師や父親から見捨てられて退学。現在はアパートで独り、アルバイトを掛け持ちしながら孤独に耐えている。一見理性的だが、内側には社会への激しい怒りと深い悲しみの「澱(おり)」を抱えている。
凪(なぎ)
蒼真のアパートの向かいにあるマンションに住む少女。アンドロゲン不応症(AIS)という身体的特性を持ち、自らを「欠陥品」と呪いながらも、周囲には「完璧な女神」を演じている。蒼真との出会いを通じ、自分を縛るスカーフを脱ぎ捨て、一人の人間として生きる覚悟を決める。
蒼真の父
世間体と名誉を何よりも重んじる厳格な男。息子の潔白を信じようとせず、「恥ずかしいから帰ってこないでくれ」と突き放した。十年後、医者となった息子の前で、小さくなった背中を晒すことになる。
凪の父
凪を病から守ろうとするあまり、彼女の人生を完全に管理・支配しようとした。過干渉という名の歪んだ愛で凪を苦しめるが、二人の医学部合格という執念を目の当たりにし、敗北と承認を認める。
佐々木(ささき)
蒼真の元同級生。自分の恋心が届かない嫉妬から、蒼真を冤罪に陥れた張本人。蒼真の前に再び現れて嘲笑うが、もはや視界にすら入れない高みへと登った二人に、完膚なきまでに置き去りにされる。
武田(たけだ)
蒼真の数少ない友人。蒼真が学校を去った後も、事件の真実を密かに調べ続け、蒼真が「決別」するための重要な証拠を届ける。