あらすじ
西暦2100年、日本。
磁気浮上車が空を滑り、網膜投影システムと脳内ナノマシンが人々の意識を繋ぐ時代。「歩きスマホ」すら過去の遺物となった近代社会の片隅に、古き時代の面影を残す古びた屋敷が佇んでいた。
そこで暮らす青年・一ノ瀬 和(カズ)。
平和を願って名付けられたその名は、今や絶望の同義語となっていた。
理由も分からぬ家族の惨殺。そして、最愛のメイド、フィッツジェラルド・エリスから向けられる復讐の銃口。
こめかみを撃ち抜かれる火薬の熱、喉を裂くナイフの冷たさ――。
十八回の「死」を積み重ね、意識が戻る場所はいつも同じ、惨劇が始まる一月の夜。
だが、十九周目。運命の歯車が狂い出す。
カズの記憶になかった「金髪の男」の影。エリスの瞳に宿る不気味な真紅の光。
そして死の淵で目醒める、神の領域――。
これは、十八回の敗北ですべてを失った男が、死の記憶を武器に、愛する少女を地獄から救い出すための逆転劇。
「――ごめんな、エリス。もう、どこにも行かせない」
2100年のネオンの下、最強の「器」へと至るカズの、長すぎる一夜が幕を開ける。