あらすじ
文明が滅びて百四十八年。崖の上の小さな集落で、語り部の老人ヨルは失われた世界の記憶を守っている。血の中の蟲、空に浮かぶ目、声が消えた日——口伝は一字一句違えず継がれてきたはずだった。だがもう誰も耳を傾けない。若者にとって、それは老人の繰り言にすぎない。
ある秋の朝、体の弱い少女ナギの掌から、見えない力が溢れた。
獣を吹き飛ばし、石壁を崩し、蒼い森の蔓を止める力。集落は恐れ、排除を叫び、やがてその力に縋ろうとする。ヨルだけが知っていた——口伝の中に、この力の名前があることを。百五十年前の賢者が断ち切ったはずの鎖が、少女の血の中で結び直されようとしている。
真実を伝えれば、少女は世界の仕組みと敵対する。黙っていれば、歪んだ禁忌が少女を縛り続ける。語り部は選択を迫られる。
——そして空の上から、百五十年の沈黙を破って、「神」が見ている。
ナギとヨル、二つの視点で紡ぐポストアポカリプス・ファンタジー。全28話+AI断章2話、約10万字完結。