あらすじ
都の花街で名を知らぬ者はいない花魁、
紅葉。
彼女の舞は美しく、
それでいてどこか悲しみを帯びていた。
幼き頃、身分の低さを嘲られた記憶。
その傷は今も心に残り、
時に息ができなくなるほど胸を締めつける。
「わっちのような者が、恋などしてはならぬ。」
そう思い生きてきた紅葉の前に現れたのは、
名家の若き貴族――藤原朔夜。
彼は他の客のように酒や戯れを求めず、
ただ静かに紅葉の舞を見つめていた。
夜ごと重ねる言葉。
月の下で交わされる、ささやかな時間。
だが、花魁は自由に恋をすることは
許されず、朔夜には政略結婚が待っている。
決して結ばれてはならぬ二人。
それでも、紅葉は舞い続ける。
胸に秘めた想いを、
誰にも知られぬように。
これは、叶うことのない恋を抱いた花魁の、儚くも美しい物語。