あらすじ
「平民に身を落とした女など要らない」——王立中央病院の待合広間で、婚約破棄を言い渡されたリリアーナ。かつては公爵令嬢だった彼女は、五年前に「家名を汚す」と勘当され、身分を隠して看護師として働いていた。婚約者エドワードが選んだのは、「聖女の資質を持つ」という男爵令嬢セレナ。しかしリリアーナには分かっていた。セレナの聖女の力が偽物であることも、自分こそが本物の『癒しの聖女』の加護を持つことも。五年間、一度も見舞いに来なかった婚約者に、彼女は涙一つ見せずに指輪を返す。「お幸せに」——その言葉と共に、リリアーナは新たな一歩を踏み出す決意をした。隣国の王立病院からの招聘状。三年間ずっと届き続けていたそれを、ついに受け入れる時が来たのだ。彼女が去った後、王立中央病院では重症患者が次々と命を落とし始め……。一方、隣国で正当な評価を受け始めたリリアーナの前に、没落したかつての婚約者が現れて——「戻ってきてくれ」という懇願に、彼女は静かに微笑んで告げる。『もう遅いですわ』。これは、捨てられた元公爵令嬢が本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。