あらすじ

五年間、私は誰にも知られず国を支えていた。 北部の飢饉も、南部の交易路も、東部の鉱山も。 全て王太子の名前で提出し、全て王太子の功績になった。 婚約破棄の日、私は一度も振り返らなかった。 泣く理由がなかった。恋心など、最初からなかったから。 領地に戻った翌週、王宮の書類棚が空になった。 代わりに書ける人間は、誰もいなかった。 私の元に届いたのは、かつて交渉の場で敵対した隣国の将軍からの手紙。 几帳面な字。的確な指摘。そして追伸に、不器用すぎる一文。 この男は、手紙では饒舌なのに対面では何も言えない。 好意を物資で送り、心配を護衛で示し、名前すら呼べずに言い直す。 国が傾いていく。 捨てた側が気づき始める。 私はもう、誰の裏方でもない。 数字しか信じなかった女が、数字では測れないものに出会う物語。

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小説を読もう2026/03/12
  • 現在の作品あの方を手放して国が傾かないと思っているのですか?